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社長のたわごと

JOY MUSIC RECORDS主宰者、社長がしかるべきときにおもむろに更新するBLOG

Category: 音楽一盤(ディスクレビュー)

Tags: CDレビュー  佐野元春  

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音楽一盤 第17回 『COYOTE/佐野元春(2007)』

こんにちは。社長です。

佐野元春のニューアルバム『COYOTE(コヨーテ)』の話の前に前回お話した前作の『THE SUN』についてちょこっとだけ復習と追記をしたいと思います。

『THE SUN』はthe HOBO KING BANDの円熟ともいえる名演奏と、絶望を知っている佐野元春の「日常の中の幸せとその先にある希望」というテーマが織り成した傑作でした。その軽快な演奏はそれゆえに「旅」や「ドライブ」にぴったりで社長は車で遠出するときはいつも『THE SUN』を積んでいきますし今でもヘビーローテーションで聴いているのです。

だから発売から3年経って新作がでると聞いたとき、3年という期間に「待望」というよりも「え、もう出るの?」という気持ちの方が強かったのです。

新作『COYOTE』を聴く前に社長が持っていた前知識。あの最強のバンドHOBO KINGではなくこのアルバム用の新バンドでレコーディングされたということ。さて実際はどうなっていたかといいますと・・・。


1. 星の下 路の上
2. 荒地の何処かで
3. 君が気高い孤独なら
4. 折れた翼
5. 呼吸
6. ラジオ・デイズ
7. Us
8. 夜空の果てまで
9. 壊れた振り子
10. 世界は誰の為に
11. コヨーテ、海へ
12. 黄金色の天使

新バンドのメンバーは
ギターに深沼元昭(PLAGUES、Mellowhead)
ドラムに小松シゲル(ノーナ・リーヴス)
ベースに高桑圭(GREAT3)

決して若手ではない、むしろベテランと呼ばれてもおかしくないキャリアの彼らですが御大元春からはひとまわり「若い」バンドであることは間違いありません。そんな彼らとの演奏はどのような音楽になるのでしょうか。

佐野元春はこのアルバムを、『「コヨーテ」と呼ばれる、あるひとりの男の視点で切り取った12篇からなるロードムービーであり、その映画の「架空のサウンドトラック盤」という想定で作った』といいます。そして『「コヨーテ」は進化する世界において、あらゆる困難を切り抜けていく者の象徴だ』といい『「コヨーテ」は、ただ素朴な生についての、素朴な生に絶望しないだけの、素朴な生の賜物としての、素朴な生に隠れた奥深い事実を暴くための、ほんとうにささやかな反抗の調べとして記録した』ともいいます。

リスナーたる社長はもちろん主人公である「コヨーテ」に自分を投影してステレオの再生ボタンを押すことになるのです。


1曲目「星の下 路の上」

ミュートをかませた重厚なエレキギターのリズムから始まるロックチューン。こういういかにも「ロックンロール」な曲から始まる元春のアルバム、久しぶりじゃないかな。この曲は先行シングルとして随分前からおなじみではあるんだけど「星の下 路の上」という言葉に社長は元春の「再びメインストリートに立つ」という決意のようなものを感じるのです。なにはともあれこの曲は、ロードムービーたるこのCDの気の利いたオープニングなのです。

2曲目「荒地の何処かで」

この曲がストーリーとしては本題の導入部であり主題であると思います。「荒地」というのはこのアルバムのひとつのキーワードになっています。

でも「荒地」って何?

社長が答えるまでもなくきっと皆さんも感じているとおりのこと。テロが繰り返され、報復としての戦争が繰り返され、資本主義は飽和状態で自由という言葉さえどこかうそ臭い。伝統的な価値観は崩壊し新しく提案される価値観に振り回される。

我々は21世紀という「荒地」をさまよう「コヨーテ」です。

この荒地の何処かで
君の声が聞こえている
この荒地のどこかで
途方に暮れている  (荒地の何処かで)



それでもとりもなおさず「君を愛してる」んです。

3曲目「君が気高い孤独なら」

もしも君が気高い孤独なら
その魂を空に広げて
もう一度
どうしようもないこの世界を
強く解き放たってやれ

通りは陽射しに満ちて 暖かく
僕らにはこの音楽がすぐそばにある (君が気高い孤独なら)



我々はコヨーテが孤独なだけのアウトローではないことを知ります。ときに「君」を必要とし、求め、愛することのできる男なのです。そして喜びを音楽で共有することのできる男なのです。「Sweet Soul,Blue Beat」と皆で叫ぶときとても幸せな気持ちになれます。

ところでこの新バンドの演奏はといいますとHOBO KINGに比べて硬質で性急な音ですね。やはりHKBの場合はバンド感というものがすさまじくて曲がどうだろうとまずはアンサンブルを楽しむというのがあるんですけど、この新バンドはいうなればより「佐野元春」なバンドだと思うんです。バンドがどうこうというより個人佐野元春がいやおうなく現れています。本当の意味でソロというか。だから今回クレジットには特にバンド名がついていないのかなと思ったりまします。

そのより「佐野元春」であるというのがとてもよく現れているのが「折れた翼」という曲。イントロなしで「live on」と元春が歌い始めるのですがその声がすばらしいんです。息遣いが、空気が、その声がすばらしいんです。50歳を過ぎて元春が手に入れた声、若い頃には絶対に歌えなかった歌がここにあります。そしてその声をこんなにすばらしくCDにパッケージしてしまったエンジニアの方々には本当に頭が下がります。

次の「呼吸」もピアノ主体のミディアムナンバー。この声がいかんなく発揮されています。

君のそば
君のそばにいて
どんな時も
君の味方
僕は君の
味方だって思っていてくれ



ちょっと泣けてきた。

「Us」という曲。

君にとって本当の友達になりたいと願う。そして「どうして僕らは憎しみあわなきゃならない?」と問いかける。このアルバムで元春は、いやコヨーテはずっと「君」に問い続けている。「君」はきっと恋人であり家族であり、そしてこの世界のことなのだと思います。

「夜空の果てまで」はサビから始まるポップなロックナンバー。

あぁ 溢れる哀しみ押さえて
往き続けていくだけの
毎日じゃない
気まぐれな愛の記しを見つけにいこうぜ



「荒地」に対して堂々たる反抗を示し「君」にもそれを促す。ああこの曲には本当に元気と勇気も与えられます。

「世界は誰の為に」もノリのいいロックナンバー。
"We've gotta change"と呼びかけるコヨーテ。ときに「そんなにくよくよしても時は過ぎるだけ」といいあるいは「そんなにじたばたしても時は過ぎるだけ」という。つまりchangeは「時代の変化に対応しろ」と言っているのではなく「ただ自分であるために自分を変えろ!」といっていると解釈できます。これはこのアルバムの回答ともいえるかもしれません。


そしてこの映画のクライマックスともいえる「コヨーテ、海へ」を迎えます。

この曲で「気まぐれな進歩はもういい」と世を切って捨てます。「愛ははかない 正義は疎い」と嘆きます。

目指せよ、海へ

そして「もう夢などみない 希望はせつない」とあります。3年前の『THE SUN』のラストナンバー「太陽」で「夢を見る力をもっと」と歌った元春は時を経て絶望し疲れ果ててしまったのでしょうか?

刻々と悲惨なニュースが飛び交う中であるいはそうなのかもしれません。でも元春は、コヨーテは海を目指します。

海に行けば何があるのか?何か変わるのか?
分かりません。

でも海に向かおうとする足、それを希望と呼ばず夢と呼ばずなんと呼べばいいのでしょう。

目指せよ、海へ

「ここから先は勝利あるのみ」と歌うコヨーテはもちろん勝ち誇ってなどいません。ただ希望を託しているのです。「望みはたったひとつ 自分自身でいたいだけ」といい「この世界を信じたい」ともいいます。

「勝利あるのみ」とつぶやきながら海を目指すコヨーテに社長は涙を流さずにはいられませんでした。
絶望に押し潰されてなお消えない人の希望に感動しました。

この曲の最後にざわめく波の音が聞こえます。

ラストナンバー「黄金色の天使」はこの映画のエンドロールです。

はたしてこの物語がハッピーエンドになるのかバッドエンドになるのか分からないまま幼い頃の思い出のいくつかをポケットにつめ込んで、いつかまた「君」に会えることを期待しながら歩き続けます。

最後に。
相変わらず社長のヘビーローテーションは『THE SUN』かもしれません。そして『COYOTE』はドライブミュージックとは無縁のロックアルバムでしょう。でもひとり、部屋の中で自分と向き合うときコヨーテは僕自身になり、また最良の友人になってくれることでしょう。
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プロフィール

社長(三田村 潤)

Author:社長(三田村 潤)
経営者でもないのに社長と呼ばれて10数年。完全自主制作音楽レーベル「JOY MUSIC RECORDS」を主宰。
最近記事量が少ないのは音楽活動が充実しているためだと信じたい。

遠距離系ポップデュオ「エーテルスケッチ」、宅ROCKソロプロジェクト「A to Z」のふたつのプロジェクトを中心に音楽活動をまったり展開。

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