音楽一盤 第14回 『Eclectic/小沢健二(2002)』
こんにちは。社長です。
更新しない期間が長ければ長いほど「なんかまともなこと書かないと」という思いがつのりそれゆえにまた更新が滞っていく。そんなダメ社長のたわごとです。
なんのことはない、いつものひまつぶしコーナー音楽一盤でございます。今日は小沢健二。社長はこの人が大好きだー。「天才」というチープながら恐れ多い言葉をこの人には使いたくなってくる。
それで彼の数あるアルバムの中でどれが一番好きかと問われると答えはなかなかでないのですが「小沢健二の最重要アルバムは何か?」と問われればまず間違いなくこの『Eclectic』であると即答することになるでしょう。その理由も含めてずばり解析したいと思います。
1. ギターを弾く女
2. 愛について
3. 麝香
4. あらし
5. 1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)
6. ∞(infinity)
7. 欲望
8. 今夜はブギーバック/あの大きな心
9. bassline
10. 風と光があなたに恵むように
11. 甘い旋律
12. 踊る月夜の前に
このアルバムはシングル「春にして君を想う」以来沈黙してきた小沢の4年振りのいわば復活アルバムでした。
今でもこのアルバムを買ってきたときのことを思い出します。そのジャケット。コピー機で印刷を失敗したかのような、あるいはバーコードの出来損ないのような意味深なジャケット。90年代の爽やかでカラフルな彼のイメージとはかけ離れたものでした。
90年代の小沢健二は…、音楽界に、ファンに、あらゆるものにどこか皮肉めいたものを持っていてしかしそれがいつしか「王子様」的キャラクターへと発展し「オザケン」はまさにこの時代の象徴的な存在になりました。
その音楽はファンクやロックやジャズを右往左往しながらその才能を周囲にアピールし、しかしボーカル小沢健二の特性を誰よりも本人が把握していたがために、ジャンルがなんであれ小沢健二という音楽に一切のブレはありませんでした。
そして2000年代初作品であるこの『Eclectic』を再生する。
1曲目の「ギターを弾く女」。幻想的で低音が効いていて少し長いイントロ。そして4年振りに聴こえる彼の声。
驚いた。
その歌声に。
オザケンのボーカルははっきりいって歌唱力のあるといったタイプではなくて線の細い声です。でもそれを彼自身がたぶん一番よく理解していて、その線の細い声を青筋を浮かべながら歌いきることですばらしい青春賛歌を世に送り出してきました。そのボーカルスタイルをこのアルバムでは完全に捨て去っていました。
ささやくように歌ういわゆるウィスパーボイス。音楽ジャンルがどうとかじゃなくて初めて「小沢健二」がブレた。そんな感じでした。
とかいいつつジャンルの話もしてみると難しいですけどR&Bということになるでしょうか。いづれにせよ重低音バリバリのブラックミュージック。なんとも言えない幻想的なアレンジ。ささやくような小沢健二のボーカル。女性のコーラス。
かなり大人っぽい音楽です。
このアルバムからは実は1枚もシングルがでていません。アルバムを聴けばすぐ理由が分かります。どれかを切る、というのが本当に難しい、すべてが繋がったアルバムなのです。(曲間がないという意味では当然ありません。アルバムの雰囲気です)歌詞カードを見ればそれが確信に変わります。普通歌詞カードは歌のタイトルがあってその下に歌詞があって、というのが10曲分なりならんでいるものですが、このアルバムの歌詞カードにはひとつ分の歌詞しか載ってない。よくその歌詞を読むとなんと12曲分全部繋げて書いてあるのです。これにはびっくり。まさか紙面を節約なんてわけはないし意図的に「全曲で1作品」と主張しているのではないかと思います。
その歌詞の内容ですが以前のオザケンが若者の青春を鮮やかに切り取ったものであったのに対し、今作では
「弾き語りするあの人の手が その気になる何秒かが分かった」
「あなたがそっとバッグに手をかけ直した時 何気もない仕草にその美しさは高まる」
「動く動くあなたの心 この世界にいる喜び」
などスピッツもびっくりのエロティシズムを含んだ女性への恋と愛を貫いたものになっています。
このアルバムを一言でいうなら、またものすごくチープな言い方ですけど「オザケン」から「小沢健二」になったアルバム、そう評するのがいいのではないかと思います。
その「オザケン」時代からの唯一のつながりとも言える「今夜はブギーバック」のセルフカバーが入っているのが素敵です。
「王子様的なオザケン」を期待する人にはまったくもってオススメできないアルバム。しかしもうそろそろ大人なポップスに酔いしれたいぜという方には自信を持ってオススメできるアルバムです。
(ちなみにこの『Eclectic』以降、2枚のアルバムをさらに残していますが1枚はB面ベスト的企画盤、もう1枚はなんとボーカル一切なしのインストアルバムということで現存する音源での最新型小沢ボーカルはいまだにこのアルバムなのです。これが冒頭、最重要アルバムといった理由のひとつです)
更新しない期間が長ければ長いほど「なんかまともなこと書かないと」という思いがつのりそれゆえにまた更新が滞っていく。そんなダメ社長のたわごとです。
なんのことはない、いつものひまつぶしコーナー音楽一盤でございます。今日は小沢健二。社長はこの人が大好きだー。「天才」というチープながら恐れ多い言葉をこの人には使いたくなってくる。
それで彼の数あるアルバムの中でどれが一番好きかと問われると答えはなかなかでないのですが「小沢健二の最重要アルバムは何か?」と問われればまず間違いなくこの『Eclectic』であると即答することになるでしょう。その理由も含めてずばり解析したいと思います。
1. ギターを弾く女
2. 愛について
3. 麝香
4. あらし
5. 1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)
6. ∞(infinity)
7. 欲望
8. 今夜はブギーバック/あの大きな心
9. bassline
10. 風と光があなたに恵むように
11. 甘い旋律
12. 踊る月夜の前に
このアルバムはシングル「春にして君を想う」以来沈黙してきた小沢の4年振りのいわば復活アルバムでした。
今でもこのアルバムを買ってきたときのことを思い出します。そのジャケット。コピー機で印刷を失敗したかのような、あるいはバーコードの出来損ないのような意味深なジャケット。90年代の爽やかでカラフルな彼のイメージとはかけ離れたものでした。
90年代の小沢健二は…、音楽界に、ファンに、あらゆるものにどこか皮肉めいたものを持っていてしかしそれがいつしか「王子様」的キャラクターへと発展し「オザケン」はまさにこの時代の象徴的な存在になりました。
その音楽はファンクやロックやジャズを右往左往しながらその才能を周囲にアピールし、しかしボーカル小沢健二の特性を誰よりも本人が把握していたがために、ジャンルがなんであれ小沢健二という音楽に一切のブレはありませんでした。
そして2000年代初作品であるこの『Eclectic』を再生する。
1曲目の「ギターを弾く女」。幻想的で低音が効いていて少し長いイントロ。そして4年振りに聴こえる彼の声。
驚いた。
その歌声に。
オザケンのボーカルははっきりいって歌唱力のあるといったタイプではなくて線の細い声です。でもそれを彼自身がたぶん一番よく理解していて、その線の細い声を青筋を浮かべながら歌いきることですばらしい青春賛歌を世に送り出してきました。そのボーカルスタイルをこのアルバムでは完全に捨て去っていました。
ささやくように歌ういわゆるウィスパーボイス。音楽ジャンルがどうとかじゃなくて初めて「小沢健二」がブレた。そんな感じでした。
とかいいつつジャンルの話もしてみると難しいですけどR&Bということになるでしょうか。いづれにせよ重低音バリバリのブラックミュージック。なんとも言えない幻想的なアレンジ。ささやくような小沢健二のボーカル。女性のコーラス。
かなり大人っぽい音楽です。
このアルバムからは実は1枚もシングルがでていません。アルバムを聴けばすぐ理由が分かります。どれかを切る、というのが本当に難しい、すべてが繋がったアルバムなのです。(曲間がないという意味では当然ありません。アルバムの雰囲気です)歌詞カードを見ればそれが確信に変わります。普通歌詞カードは歌のタイトルがあってその下に歌詞があって、というのが10曲分なりならんでいるものですが、このアルバムの歌詞カードにはひとつ分の歌詞しか載ってない。よくその歌詞を読むとなんと12曲分全部繋げて書いてあるのです。これにはびっくり。まさか紙面を節約なんてわけはないし意図的に「全曲で1作品」と主張しているのではないかと思います。
その歌詞の内容ですが以前のオザケンが若者の青春を鮮やかに切り取ったものであったのに対し、今作では
「弾き語りするあの人の手が その気になる何秒かが分かった」
「あなたがそっとバッグに手をかけ直した時 何気もない仕草にその美しさは高まる」
「動く動くあなたの心 この世界にいる喜び」
などスピッツもびっくりのエロティシズムを含んだ女性への恋と愛を貫いたものになっています。
このアルバムを一言でいうなら、またものすごくチープな言い方ですけど「オザケン」から「小沢健二」になったアルバム、そう評するのがいいのではないかと思います。
その「オザケン」時代からの唯一のつながりとも言える「今夜はブギーバック」のセルフカバーが入っているのが素敵です。
「王子様的なオザケン」を期待する人にはまったくもってオススメできないアルバム。しかしもうそろそろ大人なポップスに酔いしれたいぜという方には自信を持ってオススメできるアルバムです。
(ちなみにこの『Eclectic』以降、2枚のアルバムをさらに残していますが1枚はB面ベスト的企画盤、もう1枚はなんとボーカル一切なしのインストアルバムということで現存する音源での最新型小沢ボーカルはいまだにこのアルバムなのです。これが冒頭、最重要アルバムといった理由のひとつです)
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